パンや麺のもとになる小麦。畑で育つのは、小麦粉ではなく、小麦の穂の中に実る粒です。
小麦づくりは、生産者が種をまき、根・葉・茎を育て、穂に花が咲いた後で粒を充実させる仕事です。熟した小麦はコンバインで刈り取り、穂から粒を取り出します。その後、粒を乾燥・調製して、製粉へつなぎます。
ここでは、日本で食用の粒を作る小麦の栽培を見ていきます。秋にまいて冬を越す小麦も、春にまく小麦もあります。まず全体の流れをつかみ、その中で小麦がどう変わり、生産者が何をしているのかを追いましょう。

小麦は秋まきと春まきで、畑にいる季節が違います
小麦の種まきと収穫は、全国で同じ月に行われるわけではありません。地域と品種に応じて、畑にいる季節が変わります。
たとえば、ニップンの関東向け栽培解説は、秋に種をまき、翌年の6月に収穫する流れを示しています。一方、北海道のJAこしみずは、秋まきと春まきの両方の小麦を紹介しています。
| 資料に示された地域・栽培例 | 種まきの目安 | 収穫の目安 |
|---|---|---|
| 関東・ニップンの栽培解説 | 10月下旬〜11月上旬 | 翌年6月中旬 |
| 北海道小清水・秋まき | 9月〜10月中旬 | 翌年8月上旬 |
| 北海道小清水・春まき | 4月下旬 | 同じ年の8月 |
出典:ニップン「さあ種をまこう!」、JAこしみず「農産物・小麦」。確認日:2026年10月1日。掲載資料の栽培例の目安であり、2026年の実際の日程や全国共通の作期ではありません。
種をまく季節は違っても、種から芽が出て、穂の粒を育て、収穫するという流れは共通します。では、種をまく前の畑では、どんな準備をするのでしょうか。
小麦の種まきは、水がたまらない畑を用意するところから
小麦づくりでは、畑に余分な水がたまり続けないようにします。農研機構の栽培改善マニュアルは、麦類が水分の多い環境を苦手とし、特に米を作った後の農地では排水対策が重要だと説明しています。
生産者は、水を外へ流す溝と排水口がつながっているか、溝が土で埋まっていないかを確認します。溝を掘っただけでは、出口につながらず水が残ることもあるからです。水を田にためる米作りとは、準備のねらいが違います。
畑を整えたら種をまきます。種をまくことを「播種(はしゅ)」といいます。JAオホーツク網走の秋まき小麦の例では、生産者が播種機に種と肥料を入れ、列に種をまきながら肥料も施しています。
まいた種から根と芽が伸び、芽が地表へ出てきます。この状態が「出芽(しゅつが)」です。畑で小麦を育てる工程が、ここから始まります。
詳しい根拠は、農研機構の湿害・排水対策とJAオホーツク網走の小麦生産工程で確認できます。

小麦は根元から茎を増やし、茎の中で穂を育てます
芽が出た小麦は、1本の茎がただ長くなるだけではありません。根元から新しい茎が分かれて増えます。これを「分げつ(ぶんげつ)」と呼びます。
葉は光を利用して、生育を支える物質を作ります。この働きが「光合成(こうごうせい)」です。根から水や養分を吸い、葉などで光を使いながら、小麦は育ちます。
そして、まだ外から穂が見えない時期にも、茎の中では小さな穂が育ち始めています。これが「幼穂(ようすい)」です。
畑が草のように見える頃から、収穫する粒のもとになる穂は、内側で準備されています。
分げつと幼穂はニップン「芽が出たら」、光合成の働きは農研機構の光合成解説を参照しています。

生産者は麦踏み・追肥・除草で小麦の生育を整えます
地域や生育条件に応じて、生産者が若い小麦を踏む「麦踏み」を行うことがあります。機械で行う場合は、トラクターでローラーを引いて、小麦の上を踏み固めます。農林水産省が紹介した岩手の生産者も、この方法を使っています。
なぜ、育てている小麦を踏むのでしょうか。JA埼玉中央の解説では、分げつを促し、茎の伸びすぎを抑え、倒れにくくするなどの効果を挙げています。ここでいう「倒伏(とうふく)」は、茎が倒れてしまうことです。
麦踏みには時期の制約があります。ニップンの栽培解説では、土が乾いた状態で行い、茎が立って伸び始めた後には行わないとしています。
生産者は、雑草や養分の状態にも気を配ります。岩手の柳家の生産事例では、春に雑草取りと「追肥(ついひ)」を行っています。追肥は、小麦が育っている途中で肥料を追加する作業です。
小麦をまいたら、収穫まで放っておくわけではありません。生育段階に合わせて、畑で行う仕事も変わります。
出典:JA埼玉中央「麦の栽培管理について」、ニップン「芽が出たら」、農林水産省aff「ラーメンを支える国産小麦の生産現場」。

小麦の穂が出て花が咲くと、中の粒が充実します
茎の中で育った穂は、やがて外へ出てきます。この変化を「出穂(しゅっすい)」といいます。続いて穂の小さな花が咲き、受粉の後に実が育ち始めます。
粒の中には、でんぷんなどがたまっていきます。このように粒が充実して実る過程が「登熟(とうじゅく)」です。農研機構の秋まき小麦の研究も、出穂から成熟までを登熟期間としています。
出穂は、穂が見えるようになること。登熟は、その穂の中で粒が育つことです。穂が出た時点で、収穫する粒が完成しているわけではありません。
ニップン「茎が伸びはじめたら」は、茎の中の穂、出穂、開花、実が育つ様子を順に紹介しています。

コンバインは小麦を刈り、穂から粒を取り出します
収穫では、コンバインという機械を使います。JAオホーツク網走の生産工程では、コンバインが小麦を刈り取り、機械の中で実の部分を取り出しています。この、穂から粒を外す仕事が「脱穀(だっこく)」です。
集めた粒はトラックへ移し、麦わらは機械の後ろから排出します。畑の小麦を、そのまま粉にしているわけではありません。収穫機で集めるのは、まだ粒の状態の小麦です。
収穫の時期には、雨にも注意が必要です。農研機構の春まき品種「はるひので」の栽培マニュアルは、雨による収量や品質の低下を避けるため、適期収穫が必要だと説明しています。早ければよいのではなく、実の成熟と天候を見て刈り取ることが大切です。
刈取りは小麦を切る仕事。脱穀は、穂から粒を取り出す仕事です。
出典:JAオホーツク網走の収穫工程、農研機構「はるひので」栽培マニュアル。

収穫した小麦は乾燥・調製し、製粉会社へ送ります
収穫が終わっても、粒を出荷へつなぐ仕事が残っています。網走の例では、トラックで運ばれた小麦の重量を測り、サンプルを採って品質を確認し、乾燥・調製工場へ受け入れます。
「乾燥」は、粒に残る水分を減らす作業です。「調製」は、出荷に向けて粒の状態を整える作業で、異物や小さな粒などを選別して分ける工程を含みます。ニップンの収穫解説でも、脱穀後にふるいや風を使い、実以外のものや小さい粒を取り除く様子が紹介されています。
商業産地では、処理した粒を貯蔵し、製粉会社へ供給する設備も使われます。たとえばJAこしみずは、小麦の乾燥調製工場と貯蔵サイロを紹介し、製粉業者を通じて消費者へ届けていると説明しています。
粒を粉へ加工するのが「製粉(せいふん)」です。農林水産省の解説では、小麦を砕き、ふるいで分けるなどの工程を繰り返して、小麦粉を作ります。乾燥・調製と製粉は、別の仕事です。
穂から粒を取り出す農業と、粒から粉を取り出す加工。この二つがつながって、パンや麺の原料になります。
出典:JAオホーツク網走の工場受入工程、ニップン「いよいよ収穫」、JAこしみずの小麦施設と供給、農林水産省「小麦粉はどのようにしてつくられますか」。
小麦づくりは、穂の粒を育てて加工へつなぐ仕事です
小麦づくりを振り返ると、植物の変化と人の仕事が重なっています。
| 工程 | 小麦の変化・状態 | 生産者や施設の仕事 |
|---|---|---|
| 畑の準備・種まき | 種から根と芽が出る | 排水を整え、種をまく |
| 生育 | 茎が増え、茎の中に穂ができる | 条件に応じて麦踏みや追肥・除草を行う |
| 出穂・開花・登熟 | 穂が出て花が咲き、粒が充実する | 生育と畑の状態を確認する |
| 収穫・脱穀 | 穂の粒を集める | コンバインで刈り、粒と麦わらを分ける |
| 乾燥・調製・出荷 | 粒の水分や状態を整える | 乾燥・選別し、貯蔵・供給へつなぐ |

ここまでが、畑で小麦の粒を育てて、加工へ渡す流れです。種から茎と穂を育て、花の後に粒を充実させ、収穫・乾燥・調製でつなぐ。小麦粉のもとには、この一連の仕事があります。
参考・出典
資料の確認日:2026年10月1日。地域や品種に限った事例は、本文の説明にも条件を残しています。
- 農研機構:麦類の湿害・排水対策
- JAオホーツク網走:秋播小麦の生産工程(掲載日不明)
- ニップン:小麦を育てよう 第2回・種まき(関東・学校栽培の例、掲載日不明)
- ニップン:第3回・芽が出たら
- ニップン:第4回・茎が伸びはじめたら
- ニップン:第5回・収穫と選別
- JA埼玉中央:麦の栽培管理について(2010年分類、平成21年まき資料。麦踏みの役割のみ参照)
- 農林水産省aff:ラーメンを支える国産小麦の生産現場(2024年12月)
- 農研機構:葉の光合成速度に関する研究解説(2026年2月10日。光合成の基本説明を参照)
- 農研機構:北海道の秋まき小麦の登熟期間(2012年度成果。用語を参照)
- 農研機構:春まき小麦「はるひので」の栽培マニュアル
- JAこしみず:農産物・小麦
- 農林水産省:小麦粉はどのようにしてつくられますか(令和5年更新)
編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

