りんごはなぜ赤くなる?光・気温・成熟の関係を図解

りんごはなぜ赤くなるかを問う、枝についた赤いりんごのアイキャッチ

りんごが赤くなるのは、皮の中でアントシアニンという赤い色素が作られるからです。ただし、熟せば必ず真っ赤になるわけではありません。色づきには光、気温、成熟の進み方、品種が関係します。黄色で熟すりんごもあるため、赤さだけで食べ頃や甘さを決めることはできません。

赤色色素、光と温度、品種と成熟、色だけで判断しないという全体像
図1:赤色色素・環境・品種と成熟を分けて見る全体像。果皮の拡大表現は概念図です。

まず「色を作る仕組み」と「熟したかを確かめる仕事」を分けて見てみましょう。同じ売場に赤いりんごと黄色いりんごが並ぶ理由も、この違いから説明できます。

目次

赤い色は果皮のアントシアニンから生まれる

りんごの皮を果皮(かひ)といいます。赤い品種では、果皮でアントシアニンが作られると赤色が目立つようになります。アントシアニンは赤色などを生む色素で、りんごの果肉全体が赤く変わるという意味ではありません。ここで説明するのは皮の色です。

若い果実の緑色には、クロロフィル(葉緑素)という緑の色素が関係します。成熟が進むとこの緑色が弱まり、品種によって赤や黄色が目立つようになります。「緑の色素がそのまま赤い色素に変わる」と考えると誤解になります。JA全農長野の色の解説は、品種によって含まれる色素の量が違うことを説明しています。

見ている色関係するもの読み違えない点
赤アントシアニン皮の色の説明
緑クロロフィル成熟に伴い弱まる
黄色黄色で熟す品種の色未熟とは限らない
白い果肉と赤い果皮を分け、アントシアニンとクロロフィルを示す概念図
図2:赤い色の説明は果皮について。緑の色素がそのまま赤い色素になるという図ではありません。色素の配置や大きさは模式表現です。

では、赤い色素はいつでも同じように作られるのでしょうか。ここで光と気温が関わります。

光と気温が色素づくりを左右する

光は、果皮で色素を作る働きに関係します。日本植物生理学会の研究者回答では、紫外線や低温がアントシアニンの生成に関わる仕組みを説明しています。光が皮を赤く「塗る」のではなく、果皮が色素を作る働きに影響するのです。

一方、暑い条件では赤く色づきにくくなることがあります。農水省の2026年7月の解説は、高温でアントシアニンを作る働きが鈍り、りんごなどの色づきが悪くなるとしています。日が当たっていても、暑さが色づきを妨げる場合があるということです。

ただし「寒いほど赤くなる」ともいえません。上の研究者回答では極端な低温でも着色が妨げられると説明しています。また、弘前大学の2016年の研究紹介には、高温下でも青色光に反応して着色する品種の例があります。光の種類、温度、品種の組み合わせを無視して、全りんごに共通する気温の境界や必要日数を決めることはできません。家庭の冷蔵庫や照明で赤くする方法を勧める話ではありません。

光、温度、品種がりんごの色づきに関わることを示す三つのパネル
図3:光・温度・品種の条件。寒いほどよい、日を当てれば必ず赤くなる、という意味ではありません。

「秋に涼しくなったから赤くなる」は一部を説明しますが、それだけでは黄色いりんごや、暑さの中でも色づきやすい品種を説明しきれません。

黄色い品種は赤くならなくても熟している

シナノゴールドのように、黄色で熟す品種もあります。赤い品種と黄色い品種では、目立つ色素やその量が違います。黄色いりんごを「赤くなる前に収穫したもの」と一律に考えるのは誤りです。

黄色い品種でも、部分的に赤みを帯びることがあります。農研機構技報No.10(2021年)の「もりのかがやき」の紹介では、皮は浅い緑がかった黄色で、日が当たる側が淡い赤色になる場合があると記されています。この特徴は同品種の例であり、黄色い品種すべてに同じ変化を当てはめるものではありません。

赤い品種と黄色で熟す品種を並べ、赤さだけで比べないことを示す図
図4:黄色で熟す品種もあります。部分的に淡い赤みを帯びる例もあり、果実の色だけで品種間の熟度を比べられません。

赤い品種同士でも、環境への反応は同じではありません。農研機構の2018年の育成成果では、高温下でも濃い赤色に色づきやすい「錦秋(きんしゅう)」が紹介されています。気温だけでなく、どの品種なのかを見る必要があります。

赤さだけで熟度や甘さは決められない

着色(ちゃくしょく)は皮が色づくこと、熟度(じゅくど)は果実がどの程度熟しているかを指します。両者は関係しますが、同じ意味ではありません。

その違いが分かる研究例があります。農研機構の2020年度の成果では、収穫後の着色不良のりんごに、光と温度を制御して色づきを改善しています。対象は各産地の品種別の糖度基準を満たす着色不良果で、糖度13度以上のりんごで効果が確認されています。「ふじ」「シナノスイート」などでは、装置内を15℃に調整して青色LED光を5日間当てた条件が示されています。

ここから、内部の品質を確かめた果実でも、外側の色づきが足りない場合があると読み取れます。逆に、赤い色だけで内部の糖度や熟度が保証されると考えることもできません。これは研究例に基づく説明で、売場のりんごがすべてこの装置を通ったという意味でも、未熟果をこの方法で熟させられるという意味でもありません。

実際の収穫判断では、生産者は複数の目安を使います。青森県の2026年9月17日「りんご生産情報第11号」は、黄色品種「トキ」の熟度を表面の色、硬さ、糖度、酸度、でんぷんの残り方などで調べ、収穫では色と食味も合わせて判断するよう示しています。これは同年・同県・同品種の例です。品種や地域の基準を全国共通の「赤さの順位」に置き換えないことが大切です。

確かめること手掛かりの例色だけとの違い
皮の色づき表面の色外側を見る
内部の成熟硬さ・糖度・酸度など中身も調べる
収穫の判断品種の基準・食味複数の目安を合わせる

色を見る仕事と、熟したかを確かめる仕事。この二つを分けると、園地で何を調整しているのかも分かりやすくなります。

生産者は光の当て方と果実の状態を確かめる

生産者は、果実に光が届くように周りの葉を調整することがあります。葉摘み(はつみ)は、果実の周りの葉を取り除く仕事です。ただし、葉は多く取ればよいわけではありません。青森県の同じ2026年生産情報は、早い時期からの強い葉摘みが品質低下を招くと注意しています。作業時期や程度を見ながら色づきを整える仕事であり、本稿は家庭向けの作業手順ではありません。

袋を使う栽培では、袋を外して光を当てる工程も関わります。その目的や無袋栽培との違いは、公開済みのりんごに袋をかける理由で分けて説明しています。

また、強い日差しが当たれば必ずよい結果になるわけではありません。農水省の高温の解説は、暑い日に強い日射しを受けて果実の表面が傷む日焼け果も説明しています。赤く色づかせることと、果実を傷めず育てることは、同時に考える必要があります。

りんごの赤さは品種・環境・成熟の組み合わせ

りんごの皮が赤くなる直接の理由は、アントシアニンが作られることです。その働きには光、温度、成熟段階、品種が関わります。黄色で熟す品種もあり、赤い色だけで甘さや食べ頃を断定できません。

光、温度、品種と成熟から果皮の色素づくりへつなぎ、色と内部指標で収穫を判断する全体図
図5:色素を作る仕組みと、収穫を決める判断は分けて考えます。硬さや糖度などは必要な方法で調べ、手で持つだけでは糖度は分かりません。

売場のりんごを見るときは、まず品種の違いを考えてみてください。赤いかどうかは一つの特徴です。その色の背後には、果皮の色素づくりと、生産者が光の当たり方や収穫時の状態を確かめる仕事があります。

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出典・確認日

原典の確認日は2026年10月10日です。温度や日数を示した研究例は、その装置・品種・果実条件に限る値で、全国共通の栽培・保存基準ではありません。

図はAIで生成した概念図です。色素の大きさ・配置・果皮の厚さや実験結果を実測どおりに描いたものではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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