小麦粉の袋を開けると、中には細かな白い粉が入っています。茶色い小麦の粒が、どうしてあの姿になるのでしょう。粒を一度すりつぶすだけではありません。
普通の白い小麦粉は、主に粒の中の「胚乳」を取り出して作ります。工場では異物を除き、水で粒を調整してから、砕く・ふるう・風で分ける作業を繰り返します。採れた粉を組み合わせ、性質や出荷状態を確かめて仕上げます。
ここでは、国内の製粉工場で使われる代表的な「段階式製粉」を見ていきます。これは、小麦の粒を少しずつ砕き、粉になる部分と外側の皮を分ける方法です。畑で育てる工程ではなく、収穫した小麦粒を工場で小麦粉へ変える工程が主題です。

小麦粉のもとは、粒の中の「胚乳」
小麦粒の内側には、でんぷんやたんぱく質を含む胚乳(はいにゅう)があります。普通の小麦粉の中心になる部分です。外側を包む表皮は「ふすま」「ブラン」とも呼ばれ、粒の一部には、やがて芽へ育つ部分である胚芽(はいが)があります。
普段の小麦粉を作るときは、表皮や胚芽を除いて胚乳を粉にします。一方、全粒粉(ぜんりゅうふん)は、表皮・胚芽を含む粒全体を使った粉です。すべての小麦粉が、同じ部位だけを使うわけではありません。

| 粉の種類 | 使う部位の違い |
|---|---|
| 普通の白い小麦粉 | 主に胚乳。表皮・胚芽を取り分ける |
| 全粒粉 | 胚乳に加え、表皮・胚芽も含む |
出典:日清製粉グループ「小麦の構造と全粒粉」。代表的な違いを示しています。
白い粉になる理由を考えるには、「どれだけ細かくするか」だけでなく、「粒のどこを粉にするか」を見る必要があります。次に、その部分を分けやすくする準備です。
製粉工場は、異物を除いてから小麦に水を加える
最初は精選(せいせん)です。製粉する前に、健全でない小麦や異物を取り除きます。小麦の外側の皮を取り分ける工程とは別の、原料を整える作業です。
続いて水を加え、粒を製粉に向く状態にする調質(ちょうしつ)を行います。水を含ませると、内側の胚乳は砕けやすくなり、外皮は細かく砕けにくくなります。この差を作ることで、外皮から胚乳を分けやすくするのです。
「粉にするのに、なぜ水?」と思うかもしれません。ここでの水は、生地をこねるためではなく、粒の砕け方を調整するために使います。水の量やねかせる時間を、すべての小麦で同じと考えることはできません。

作る小麦粉の用途に合わせて、原料の小麦を組み合わせる「配合」も行います。これは小麦粒どうしの組み合わせです。後で、採れた粉を組み合わせる作業も出てくるので、二つを分けて覚えておきましょう。
この準備を終えた小麦は、農水省が示す段階式製粉の工程へ進みます。
製粉では、砕く・ふるう・風で分ける作業を繰り返す
最初のロール機は、向かい合ったローラーで小麦粒を開くように砕きます。表面に溝のあるブレーキロールを使い、外皮を細かく砕き過ぎないようにしながら、粗い胚乳を分けます。この作業が破砕(はさい)です。
砕いたものは、シフターというふるいの機械へ送ります。ここで粒の大きさごとに分け、十分に細かくなった粉を取り出します。まだ大きい粒は、次の処理へ回します。
ただし、大きさで分けるだけでは、粗い胚乳に外皮の破片が混ざります。そこでピュリファイヤー(純化機)を使い、ふるいと風で分けます。外皮と胚乳の重さの違い、正確には「同じ体積で比べた重さ」の違いを利用する工程です。
外皮を分けた胚乳は、溝のないスムースロールでさらに細かくします。この粉砕(ふんさい)の後にも、ふるいで粉を採ります。まだ粗いものは、分離と粉砕を繰り返します。

| 機械・作業 | 主な仕事 | 次へ進むもの |
|---|---|---|
| ブレーキロール | 粒を開くように砕く | 外皮と粗い胚乳など |
| シフター | 大きさでふるい分ける | 採取する細かい粉/次に処理する粗いもの |
| ピュリファイヤー | 風とふるいで外皮を分ける | 外皮を分けた粗い胚乳 |
| スムースロール | 胚乳を細かく砕く | 再びふるいにかける粉砕物 |
出典:製粉振興会の破砕・純化・粉砕の説明、日清製粉グループのふるい分けと反復の説明。機械の役割をまとめた表で、実工場の全経路を示すものではありません。
ここで重要なのは、採れた細かい粉まで全部戻すのではないという点です。粉はその都度取り出し、まだ粗いものを次の処理へ送ります。「一度砕いて終わり」でも、「全部を同じ場所へ循環させる」でもありません。
製粉で採れた粉は、性質を見て組み合わせる
工程の途中で採れた粉は、どれも同じ性質ではありません。製粉工場では、成分や性質を見て粉を組み合わせ、均一に混ぜて、目的の小麦粉へ仕上げます。先ほどの原料配合が「小麦同士」だったのに対し、ここでは「採れた粉同士」を組み合わせます。
強力粉・中力粉・薄力粉の違いも、粉の細かさだけで決まるわけではありません。原料小麦の性質や、たんぱく質の質・量も関わります。袋の名前には、ただ挽き方を細かく変えた以上の違いがあるのです。
取り分けた外皮は、ふすまという副製品になります。主な行き先は家畜の飼料です。製粉前に除く石などの異物と違い、小麦由来の部位を別の用途へ届けています。
製粉工場は、粉の性質と出荷状態を確かめる
機械が動いていても、人の確認は残ります。日清製粉グループは、同じ品種でも水分や硬さに違いがあるため、小麦の状態を見てローラーの間隔などを調整し、途中の粉も確認すると説明しています。
出来上がった粉は、成分だけを見て終わりではありません。同社の例では、水を加えた生地の性質を調べ、パンや麺などに加工したときの状態も試験します。小麦粉を使う人が、目的の食品を作れるか確かめるためです。
家庭用の袋詰め工程については、包装や賞味期限の印字、金属の混入、重量などを確認して出荷すると紹介しています。これらは同社の工程例であり、すべての工場や出荷方法が同じ設備・順序だという意味ではありません。
参考:日清製粉グループの製粉・加工試験、包装・検査・出荷の紹介。
小麦粉づくりは、胚乳を取り分けて仕上げる工程

普通の白い小麦粉は、主に小麦の胚乳を使います。工場は原料を整え、胚乳と外皮を分けながら、砕く・ふるう工程を繰り返します。採れた粉は性質を見て組み合わせ、検査して出荷します。
袋の中の白い粉は、単に粒を細かくした結果ではありません。使う部位を分け、粉の性質をそろえる工程を経たものです。粒から粉への変化は、この二つをつなげると理解できます。
小麦の種まきから収穫までの流れは、「小麦はどうやって作られる?」で図解しています。
参考・出典
- 農林水産省:段階式製粉の工程(2023年更新)
- 一般財団法人 製粉振興会:製粉工程と生産・流通
- 日清製粉グループ:胚芽は芽へ育つ部分(部位の説明のみ参照)
- 日清製粉グループ:小麦の構造と小麦粉の種類
- 日清製粉グループ:小麦粉ができるまで・Web工場見学
- 日清製粉グループ:小麦粉百科・製造から包装まで
資料確認日:2026年10月1日。図は工程の役割を示す概念図で、個別工場の設備配置を再現したものではありません。
編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

