ハウスのいちごにミツバチがいるのはなぜ?受粉と実の形の関係

ハウスの白いいちごの花を訪れるミツバチと、ハウスにミツバチがいる理由を問う文字
AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。実在する農場の記録写真ではありません。

いちごのハウスでは、白い花の上でミツバチが動いていることがあります。食べるのは赤い実なのに、なぜ花に蜂が必要なのでしょうか。

ミツバチは花に集まる多くの雌しべへ花粉を運び、花を支える部分が膨らんで実になる過程を助けるために使われます。 蜂の働きは「実ができるか」だけでなく、「どのように膨らむか」にも関係します。

ミツバチが花粉を運ぶ受粉、花の内部の受精、その後のいちごの膨らみを上から順に示す図
図1:受粉から実の膨らみまでの概念図。丸い枠は一本の雌しべの拡大で、花全体とは倍率が違います。食べる部分は花托が膨らんだもので、一本の雌しべが全体へ変わるわけではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。
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ミツバチは花の上で花粉を雌しべへ運びます

花の雄しべは花粉を作り、雌しべはその花粉を受け取ります。いちごでは、一つの花の中央に多くの雌しべが集まっています。ここへ花粉が届くことが、実を育てる入口になります。

ミツバチは蜜や花粉を集めるために花を訪れます。雄しべに触れたときに体に付いた花粉が、花の上を動く間に雌しべへ届きます。このように花粉が雌しべの先に付くことを「受粉」といいます。蜂が花で行っているのは、この花粉の移動です。

いちごの白い花を上から見て、周囲の黄色い雄しべと中央に集まる多くの緑の雌しべへ指示線を引いた図
図2:いちごの花の雄しべと雌しべ。数や寸法を測った図ではなく、配置を理解する概念図です。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

花粉が届く「受粉」と、内部で起こる「受精」は別です

花粉が付いた後は、花粉から「花粉管」という細い管が伸び、雌しべの内部へ進みます。管が運ぶ精細胞が内部の卵細胞と結び付くことが「受精」です。蜂は花粉を届けますが、受精そのものは花の内部で起こります。

多くのいちご品種は、自分の花粉でも受精できます。しかし、自分の花粉を使えることと、多くの雌しべへ花粉が十分に届くことは別です。ミツバチなどが花粉を運ぶ働きは、後者を助けます。

上段では雌しべの先に花粉が付き、下段では花粉管が内部へ伸びて卵細胞の場所へ届く模式図
図3:受粉と受精は別の段階です。一本の雌しべを簡略化して拡大した概念図で、実際の器官の形・寸法比を厳密に再現したものではありません。蜂は花粉を運び、受精は内部で起こります。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

花での受精が、その後の花托の膨らみと実の形に関わります

いちごの赤い甘い部分は、花を支える「花托(かたく)」が膨らんだものです。花床(かしょう)とも呼びます。表面のつぶつぶは、それぞれ「痩果(そうか)」という小さな果実で、その中に種子があります。花にあった多くの雌しべが、後の小さな果実につながります。

受精後の小さな果実の側では、植物体内で生育を調節する「植物ホルモン」が働きます。オーキシンやジベレリンと呼ばれる物質が、花托の生育を支えます。

多くの雌しべで受精が進むと、花托がそろって膨らみやすくなります。一部で受精が進まないと膨らみ方が偏り、形がいびつになることがあります。花での花粉の届き方が、後の実の形にもつながるのです。

Klattらの研究は、ドイツの露地で複数品種を使い、虫が訪れる条件と、自家受粉・風による受粉の条件を比較しています。主な訪花者は野生の蜂でした。これを日本のハウスで使うミツバチの効果率とは扱わず、受粉と受精、果実の形をつなぐ仕組みとして参照します。

受精が広く進む例と一部で進まない例を上下に並べ、後者では花托の一部が十分に膨らまない様子を示す図
図4:受精不足と偏った膨らみを結ぶ模式例。表面の小さな果実は、赤い食べる部分へ変わるのではありません。いびつな実には花粉・雌しべ・温度・日照なども関係し、形だけで原因を特定できません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

いびつないちごの原因をミツバチ不足だけにはできません

受精がうまく進まない原因は、花粉が届かないことだけではありません。茨城県園芸研究所の「いばらキッス」の研究報告では、次のような要因が整理されています。

関係するもの報告が挙げる要因
花粉を運ぶ昆虫ミツバチが花を訪れる回数の不足
花粉・雌しべ花粉の受精能力の低下、雌しべの異常
生育環境・管理低温・高温、日照不足、過剰な施肥など

表の出典:茨城県園芸研究所「イチゴ『いばらキッス』の奇形果発生条件と適正な生育管理」(2023年8月31日公開、2026年9月30日確認)。特定品種の研究を起点とする整理で、すべての品種に同じ栽培処方を示す表ではありません。

つまり、いびつな実を見ただけで「この農場はミツバチが少なかった」とは判断できません。花の状態と環境も含めて見る必要があります。

生産者は巣箱だけでなく、花と蜂の活動も確認します

ミツバチを使う生産者は、巣箱を置くだけで作業を終えません。熊本県の協議会の資料は、花の量と蜂の規模を合わせ、実際に蜂が飛んでいるかを見て、温湿度や薬剤の影響にも注意するよう示しています。

花が少ないときに蜂を入れたり、巣箱を多くしすぎたりすると、蜂の維持や果実品質の問題につながる場合があります。「蜂を増やせば必ずよい」とは言い切れません。

生産者が花と蜂の活動を確認し、受粉から受精、花托の膨らみへ進む流れと、花の状態や環境も関係する条件を示す図
図5:生産者の確認と、受粉・受精・花托の膨らみをつないだ完全版の概念図。中央の丸い枠は一本の雌しべの拡大です。蜂がいるだけで正常な形を保証する図ではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

苗から収穫までの流れは「いちごはどうやって作られる?」で確認できます。ハウスのミツバチは、花粉を必要な雌しべへ届け、実の形成と膨らみ方を支えるために使われているのです。

参考・出典

編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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