りんごに袋をかけるのはなぜ?有袋・無袋と袋を外す理由を図解

袋で包んだりんごと袋のないりんごが枝についた姿

りんごに袋をかけるのは、果実を虫や傷から守り、色づきや貯蔵性を整えるためです。赤く色づく品種では、後で袋を外して光を当てます。袋を使わずに育てる方法もあり、すべてのりんごに必須の作業ではありません。

枝についたりんごを包む紙袋は、収穫後の包装とは違います。生産者が実を育てる途中で使う袋です。「守るなら、ずっとかけておけばよいのでは?」という疑問を、かける工程と外す工程から見てみましょう。

実を守る、色づきを整える、貯蔵につなぐという袋かけの目的
図1:袋の目的は保護・着色・貯蔵性です。収穫後の保存は施設での別管理も必要です。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。
目次

りんごの袋かけは、果実を守り、色と貯蔵性を整える

枝についた果実を一個ずつ袋で包む作業を、袋かけといいます。袋のある栽培は有袋栽培(ゆうたいさいばい)、袋を使わない栽培は無袋栽培(むたいさいばい)です。葉や木全体を包むのではありません。

青森県の資料では、袋かけはもともと害虫から果実を守る目的で広まり、現在は着色と貯蔵性を高める目的でも行われると説明しています。弘前市の作業紹介も、虫や傷への対策、色づき、貯蔵性を挙げています。

目的生産者が整えたいこと読むときの注意
果実を守る虫や接触による傷を抑えるすべての被害を防ぐ保証ではない
色づきを整える品種に合った外観に仕上げる赤い品種では袋を外す工程もある
貯蔵性を整える収穫後の保存を見据えて育てる保存には収穫後の管理も必要

三つの目的は同じではありません。袋をかけたから必ず甘くなる、袋があれば病害虫の管理が要らない、と考えるのは飛躍です。袋の有無を味や安全性の一律の優劣に置き換えず、生産の仕事として見ます。

では、生産者はどの実に袋をかけるのでしょうか。

りんごは、残す実を選んでから一個ずつ袋をかける

りんごの木についた小さな実を、すべて残すわけではありません。生産者は余分な実を取り、育てる実を選びます。この作業が摘果(てきか)です。弘前市の記録では、摘果を済ませてから袋をかけています。

残す実が決まると、生産者は枝についた果実を一個ずつ包みます。実は木についたまま育ち、葉は袋の外にあります。袋かけは、もいでから箱や袋へ入れる作業ではありません。

実を選ぶ、袋をかける、袋を外す、光を当てるの順
図2:赤い品種の袋かけと袋はぎをつないだ模式例。作業時期や袋は品種・園地で変わります。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

袋にも違いがあります。弘前市は一重、二重、三重などの袋を紹介し、品種によってサイズや種類が変わると説明しています。層の多い袋がどの品種にも優れる、という意味ではありません。使う袋によって、後で外す仕事も変わります。

袋が光を遮るなら、赤くしたい果実にはどうするのでしょうか。

赤いりんごは、袋を外してから光で色づかせる

生産者が果実の袋を取り除く作業を、袋はぎといいます。赤く色づく品種では、袋の中で育てた果実を外へ出し、光を当てる工程があります。青森県りんご対策協議会も、袋はぎから日光による色づきへ説明をつないでいます。

つまり、袋をかけることと、かけたまま赤くすることは同じではありません。袋で覆う段階と、袋を外して光を当てる段階を組み合わせるのです。

青森県の品種紹介には、同じ「ふじ」でも有袋と無袋で果皮の見え方が違う例があります。ただし、これをすべての品種の色の決まりにしてはいけません。黄色く熟すりんごまで袋を外せば赤くなる、という説明でもありません。

本稿が扱うのは、光の当て方を調整する仕事までです。赤くなる仕組みそのものと、果実の成熟は分けて考えます。次は、袋を使わない場合です。

りんごは、袋をかけずに育てる方法もある

無袋栽培は、袋を使わずに果実を育てる方法です。JA全農山形は、産地の「ふじ」を無袋で育てる例を紹介しています。したがって、商品として育てるには必ず袋が必要、というわけではありません。

袋を使う有袋栽培と、袋を使わない無袋栽培の比較
図3:袋の有無と、実を育てる管理の有無は別です。味・品質の優劣を表す比較ではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。
比べる点有袋栽培無袋栽培
果実を包む袋使う使わない
袋を扱う作業かける・外す仕事があるその仕事はない
実を育てる管理摘果なども行う摘果なども行う

袋のない果実も、何も管理せず育てているわけではありません。袋の有無と、摘果などの栽培管理の有無は別です。

有袋と無袋は、「手間をかけた良いりんご」と「放っておいたりんご」の比較ではありません。品種や目指す外観、保存・出荷の計画などが違う中で、袋を使う管理も使わない管理もあります。どちらかが必ず甘い、長くもつ、と一律に言い切らないことが大切です。

袋を使う場合も、外し方は一つに決められるのでしょうか。

りんごの袋はぎは、袋の種類と日差しにも合わせる

袋を外すと、果実に当たる光の状態が変わります。生産者にとっては、袋を取れば終わり、という単純な仕事ではありません。袋の種類や果実の状態、日差しなどの条件を見て扱います。

青森県が2005年に公表した資料では、一度で外すための二重袋と、二度に分けて外す袋などを比較しています。2000〜2004年に青森で行われた、ふじ・ジョナゴールドなどを対象とする試験で、袋の種類と外し方によって果実の日焼けの出方が違いました。

ここでいう日焼けは、強い日差しなどによって果皮が傷むことです。試験は、袋を外す条件も果実の仕上がりに関わることを示す一例です。古い地域試験を、全国で今も使える最適な日付や作業方法に置き換えるものではありません。

袋の種類、日差し、果実の状態を見ながら袋を外す生産者
図4:袋はぎは条件に合わせる仕事です。果皮の変色はリスクの模式例で、必ず起こるものではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

袋かけも袋はぎも、果実を一個ずつ扱う仕事です。目的だけでなく、それを実現する生産者の仕事がある、と見ると紙袋の意味が分かります。作業時間や費用は園地や方法で違うため、一律の数字にしません。

では、貯蔵性を整える袋かけと、収穫後の保存は同じ仕事なのでしょうか。

りんごの袋かけと、収穫後の貯蔵は別の仕事

袋かけは、果実が木についている間の管理です。長く保存し、後の時期に出荷するには、収穫後にも別の仕事があります。

青森県の資料は、収穫に続いて低温の冷蔵庫や、庫内の空気の組成を調整するCA貯蔵を紹介しています。袋かけが貯蔵性を整える目的を持つことと、収穫した果実を適切に保存することは別です。袋だけで翌年までそのまま保存できる、という意味ではありません。

実を選んで袋をかけ、外して光を当て、収穫から保存と出荷へ進む
図5:赤い品種の有袋栽培を例にした全体像。袋を使わない栽培もあり、収穫後の保存は別の仕事です。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

売場の一個は、袋を使うかどうかだけで決まるものではありません。園地で育てる管理と、収穫・保存・出荷の仕事がつながった結果です。栽培全体は、りんごの作り方を剪定から収穫まで解説した記事で確認できます。

まとめ:りんごの袋は、目的に合わせて使い、必要な時期に外す

りんごの袋は、虫や傷から果実を守り、色づきや貯蔵性を整えるために使います。赤い品種では後で袋を外して光を当て、無袋栽培では袋を使わず育てます。袋の種類や外す条件、収穫後の管理まで分けて見ると、「ただ包んでいるだけ」ではないことが分かります。

紙袋を見かけたら、まず「今は果実を覆って育てる段階なのか、後で外して色づかせる段階につながるのか」と考えてみてください。それが、りんごに袋をかける理由です。

参考・出典

資料確認日:2026年10月10日。一次資料の条件を保持し主担当AIが照合。図解はAIによるイメージをもとにbest earth編集部が作成した概念図で、実在の園地・特定品種の写真ではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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