大豆の根につく丸いつぶは「根粒(こんりゅう)」です。根粒の中では、細菌の仲間である「根粒菌(こんりゅうきん)」が、空気中の窒素を大豆が使える形に変えています。大豆はその働きに必要な材料を葉で作り、根粒へ送ります。根粒は菌そのものではなく、大豆と菌が一緒に働く場所です。
食べる大豆の粒と、根についているつぶは別のものです。この記事では根粒の中へ視点を移し、「何を受け取り、何を渡すのか」をたどります。

根粒は大豆の組織、根粒菌はその中で働く細菌
見えるつぶと、そこにいる生きものを分けると仕組みが分かります。根粒は大豆の根にできる器官です。その内部の植物の細胞に、根粒菌が共生します。
「共生」は、異なる生きものが関わって暮らすことです。この組み合わせでは、大豆は窒素を得て、菌は大豆が光合成で作った材料を受け取ります。両方に利点があります。
| 名前 | 何を指す? | この仕組みでの役割 |
|---|---|---|
| 根 | 大豆の器官 | 土中の窒素化合物を取り込む |
| 根粒 | 根にできる大豆の器官 | 根粒菌が働く場所になる |
| 根粒菌 | 根粒内に共生する細菌 | 窒素を大豆が使える形に変える |
根からの養分吸収と、根粒内での菌の働きは別の経路です。

根粒ができるきっかけは、大豆と土中の根粒菌のやり取りです。両者が出す物質を互いに認識すると、根粒の形成や菌の内部への侵入が進みます。ただし、どの植物とどの根粒菌でも同じように共生するわけではありません。組み合わせには相性があります。
つまり、根粒は根粒菌が外から貼りついた塊ではありません。大豆が作る場所と、そこへ入って働く菌の組み合わせなのです。
根粒菌は空気中の窒素を、使える形に変える
窒素は、大豆がアミノ酸などを作るために必要です。一般に植物は、土の中にあるアンモニウムイオンや硝酸イオンなど、窒素を含む物質を根から取り込みます。空気中にある窒素ガスを、そのまま材料として使うことはできません。
窒素ガスは窒素原子どうしの結びつきが強く、安定しているためです。根粒菌は「ニトロゲナーゼ」という酵素を使い、この窒素をアンモニアへ変えます。アンモニアは植物が利用する窒素源になります。この変換が「窒素固定(ちっそこてい)」です。

大豆が空気中の窒素を利用できるのは、この菌の働きを介するからです。「大豆自身が空気を吸って窒素を取り込む」と考えると、菌の役割が抜けてしまいます。
葉で作った材料が、根粒菌の仕事を支える
根粒菌だけが一方的に大豆を助けているわけではありません。大豆は葉で光合成を行い、その産物を根粒へ供給します。根粒菌は大豆から受け取る材料を使って生き、窒素固定を行います。
ここでいう光合成の産物は、菌へ渡るまでに植物の中で形を変えます。学会の解説では、根粒内で働く菌が主にリンゴ酸などを受け取ると説明されています。「葉の糖をそのまま菌へ渡すだけ」という一本の反応ではありません。

根粒の形成と窒素固定には、植物側にもエネルギーの負担があります。そのため植物は、根粒の数を調節する仕組みを持っています。土中に窒素栄養が多いと根粒形成が抑えられることもあり、「つぶが多いほど、いつでも有利」とは言えません。
根だけに注目していたつぶの働きは、葉での光合成ともつながっています。では、根粒があれば畑の管理や肥料は不要なのでしょうか。
根粒があっても、畑の条件や肥料の確認は必要
根粒による窒素固定は、大豆の窒素供給を支える仕組みです。しかし、どの畑でも同じ量を供給できるわけではありません。根粒が十分につかない大豆では、窒素が不足する場合があります。
例えば北海道の道央では、2001〜2004年度に、水田から転換した畑の根粒着生不良を調べています。対象の畑・品種では、根粒のつきが悪い大豆の収量や品質が低下し、条件を限定した窒素追肥の効果が確認されました。これは特定地域・品種・根粒着生不良条件での研究であり、全国の大豆への追肥指示ではありません。
根粒菌が変えるのは窒素です。植物が必要とするリンやカリウムまで、窒素固定で生まれるわけではありません。また、土の水分条件も生育に関わります。農研機構は、水田転換畑の過湿による出芽不良や収量低下を課題に挙げ、排水と地下からの水分供給を両立する技術を研究しています。
| 確認すること | なぜ根粒だけでは決まらない? |
|---|---|
| 窒素の供給 | 根粒の形成・働きや、土中の窒素が関わる |
| 窒素以外の養分 | リン・カリウムなどは窒素固定では補えない |
| 畑の水分 | 過湿などが大豆の生育を妨げる場合がある |
肥料の種類・量や水分管理の具体的な判断は、地域の栽培指針や畑の条件によって異なります。
大豆を種まきから収穫まで育てる全体の流れは、大豆はどうやって作られる?で説明しています。ここでは、その生育を根の内側から支える仕組みだけを取り上げました。
根のつぶは、菌と大豆が窒素をやり取りする場所

大豆の根にあるつぶは根粒で、その中に根粒菌がいます。菌が空気中の窒素を使える形へ変え、大豆は葉で作った材料を送って菌の働きを支えます。
根粒は「菌そのもの」でも「肥料が必ず要らなくなる印」でもありません。根の小さなつぶは、大豆と菌が協力して窒素を得る場所なのです。
参考資料・図解について
一次資料・研究者による解説を2026年10月8日に確認しました。古い研究の対象年・地域・品種を現在の全国共通条件へ広げていません。
- 岩手大学「窒素源を獲得するための根粒共生メカニズム」(2020年8月28日。窒素の形、根粒形成、宿主の相性)
- 宮崎大学「ダイズと根粒菌」(2019年3月1日。大豆の根粒と菌、窒素固定)
- 日本植物生理学会「根粒菌の内部構造」(回答2021年2月18日。根粒内での材料のやり取り)
- 日本農芸化学会「葉と根のコミュニケーションによる根粒形成の遠距離制御」(2016年1月20日。根粒形成の負担と調節)
- FNCA「バイオ肥料に関連した用語の説明」(掲載日表示なし。窒素固定と植物の養分)
- 北海道立総合研究機構「道央転換畑における根粒着生不良大豆への窒素追肥による収量・品質改善」(2005年1月作成、研究2001〜2004年度)
- 農研機構「地下水制御による大豆の安定生産への取り組み」(掲載日表示なし。水田転換畑の水分条件)
図はAIで制作した概念図です。実物写真、顕微鏡写真、菌の数や器官の正確な比率を示す図ではありません。短い文言を画像と一体で生成し、日本語・矢印の方向・根粒と菌の区別を本文の根拠と照合しました。数値・出典・研究条件は画像に埋め込まず本文に残しています。
編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

