いちごはなぜ赤くなる?果実が熟す仕組み

緑、白、赤のいちごを並べ、なぜ赤くなるかを問う編集画
AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。赤く熟す品種の色の違いを模式化したもので、記録写真ではありません。

育っているいちごを見ると、緑や白だった実が赤く変わっていきます。同じ実なのに、なぜ色が変わるのでしょうか。

赤く熟すいちごでは、緑の色素が減る一方で、赤色を示す色素「アントシアニン」が増えます。 ただし、色づき方は光、温度、品種によっても変わります。赤色の理由と、色づきを調節する条件を分けて見てみましょう。

緑、白、赤の成熟段階と、緑色色素が減り赤色色素が増えることを別々に示す図
図1:赤く熟すいちごの色の変化を模式化しています。円は色素の量の変化のイメージで、実測濃度や化学構造ではありません。矢印は成熟の進行を示します。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。
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いちごは、緑の色素が減り、赤い色素が増えることで色づきます

若いいちごにある緑色色素を「クロロフィル」といいます。成熟の過程ではこの色素が減り、赤色などを示すアントシアニンが蓄積します。緑の色素そのものが赤い色素に変身するのではなく、違う色素の量が変わるのです。

研究者が品種Fugiliaを温室で調べた試験では、大きな緑の実の段階からクロロフィルが減り、白い段階の後にアントシアニンが増えました。これは試験条件で観察した過程で、どの品種も同じ日数で赤くなるという意味ではありません。

なお、私たちが食べる大きな部分は、花を支える土台の「花托(かたく)」が膨らんだものです。農水省は「花床(かしょう)」という呼び名で説明しています。ここでは、この食べる部分の色の変化を中心に扱います。

緑のいちごとクロロフィル、赤いちごとアントシアニンを独立したパネルで示す図
図2:緑色のクロロフィルと、赤色などを示すアントシアニンは別の色素です。円は色見本で、果実の細胞や色素分子の像ではありません。色素同士の変換を示す矢印はありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

いちごの成熟では、色だけでなく糖・香り・硬さも変わります

では、赤くなることだけが「熟す」ということなのでしょうか。成熟では、色のほかに成分や硬さも変わります。これらは一緒に観察する対象ですが、同じものを測っているわけではありません。

成熟のどの面を見るか研究者が確かめたもの
色づきアントシアニンの量
味に関わる成分糖と有機酸の量
香りいちごの香りに関わる成分の量
食感実の硬さ

表の根拠:Sunらの光と成熟の研究(2024年、品種Yuexinの袋掛け区と無袋区の比較、2026年10月1日確認)。この試験では、色素や香りの成分の差に比べ、糖と有機酸の差は小さく、硬さも別に測定されました。

つまり、赤さをそのまま糖度の数値に置き換えることはできません。「色素と糖はまったく無関係」と逆に決めつけるのでもなく、色は成熟の一つの面として見ると整理できます。

いちごが受ける光は、色づきや成熟の調節に関わります

色素や成熟の変化には、植物の体内で働く信号物質も関わります。この信号物質を「植物ホルモン」といい、いちごでは「アブシシン酸(ABA)」が成熟を進める信号の一つとして調べられています。ABAは赤い色素そのものではありません。

Fugiliaの研究では、ABAを作る働きを抑えると成熟が抑えられ、外からABAを与える試験で色づきが回復しました。植物の中で成熟を調節する仕組みがあることを示す実験で、栽培用の処理手順を勧めるものではありません。

光も、色づきや成熟に関わる条件です。Sunらの試験では、中国で栽培した品種Yuexinの小さな緑の実に、光を遮る紙袋を掛けました。袋を掛けない実と比べると、色素の蓄積や成熟が遅れました。

株に付いたいちごへ紙袋を掛けた区と掛けない区を並べ、遮光区の白い実を別枠で示す図
図3:品種Yuexinの紙袋による遮光試験を説明する模式図。左下の別枠は袋の中の実の色を示し、収穫後の保存試験ではありません。袋・株・実の寸法や位置は試験写真の再現ではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

光が外から実を赤く塗るのではなく、光を受ける条件が植物の中の反応に関わる、と考えるとつながります。ただし、この結果は「日光を増やすほど、どのいちごも必ず赤く甘くなる」という保証ではありません。

いちごの高温による色づきの変化は、成熟段階でも違います

暖かくすれば色づきがどんどん進む、とも言い切れません。明るい時間と暗い時間の温度を変えた「さちのか」の試験では、高温区で成熟した実のアントシアニンの蓄積が少なくなりました。

比較した区明るい時間の温度暗い時間の温度
対照区20℃15℃
高温区30℃15℃

表の条件:生育室で育てたさちのか。明るい時間は14時間、暗い時間は10時間で、両区の光条件は同じ。湿度は80%。研究は2018年公表、確認日は2026年10月1日です。出典:Okutsuらの高温と着色の研究。この温度は実験の比較条件で、全品種の適温を示すものではありません。

さらに研究者は、高温にする時期も変えて比較しました。実が半分ほど赤くなる前から高温にした場合には影響がありましたが、その段階の後から高温にした場合には、対照区との有意な差がありませんでした。

いちごが緑から白、部分着色、赤へ進む段階と、高温を受け始める早さの違いを示す図
図4:高温の開始時期を、色づきの早い段階と進んだ段階に分けた概念図。帯は正確な処理期間や着色面積を示す目盛りではありません。さちのかの試験温度と結果は本文の表・説明で確認できます。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

何度だったかだけでなく、成熟のどの段階でその温度になったかも重要です。 この一つの試験から、反対に「冷やすほどよく赤くなる」と結論を広げることもできません。

いちごの表面と内側の赤さは、品種によっても違います

赤いいちごを切ったとき、内側まで同じ赤さとは限りません。Yuanらが比較したBenihoppe(紅ほっぺ)は表面も果肉も赤く、Xiaobaiは表面が赤く、果肉が白い品種でした。表面と果肉を分けて測ると、Xiaobaiの果肉ではアントシアニンがほぼ検出されませんでした。

これは、表面が赤くても内側は白いという品種の例です。この白い果肉を「まだ熟していないから白い」と説明するのは適切ではありません。色を比べるときは、成熟段階に加え、品種と見ている部位もそろえます。

緑と赤の色素の変化に、光、温度、植物内の信号、品種と部位の条件を結び、赤い表面と異なる果肉色を示す図
図5:線は色づきに関わる条件の整理で、光や高温の増加が必ず赤さや甘さを増すという意味ではありません。品種と部位の枠では、両方とも表面は赤く、内側の色が違います。植物内の信号は成熟の調節に関わる働きとして示しています。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

苗から収穫までの栽培は「いちごはどうやって作られる?」へ。別の作物の色づきを比べたい場合は、「トマトはなぜ赤くなる?」で確認できます。

いちごが赤くなる直接の理由は、赤色色素のアントシアニンが増えることです。緑色色素が減る変化も重なり、その進み方は光、温度、品種などで変わります。赤色は成熟を知る手がかりの一つですが、いちごの味全体を赤さ一つで表しているわけではありません。

参考・出典

各原典の確認日:2026年10月1日。図解は模式図で、実測写真・栽培の処方を示すものではありません。

編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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