店に並ぶ赤いいちご。あの実は、畑に種をまいたらすぐにできるのでしょうか。
いちご作りは、まず収穫用の苗を育てるところから始まります。親株から増やした子苗を植え、花が咲いたら受粉を助け、育って色づいた実を生産者が順に収穫します。
この記事では、栃木県のハウス栽培を工程の具体例にして、苗づくりから出荷までを追います。作業する月は地域、品種、露地かハウスかによって変わります。

いちご作りは、親株から子苗を増やすところから始まります
多くの生産現場で、収穫用の株は種からではなく「親株」から増やします。親株とは、苗を増やす元になる株です。そこから地面をはうような茎「ランナー」が伸び、その先に子苗ができます。
栃木県の施設栽培例では、生産者は子苗を親株から切り離し、ポットなどに植えて育てます。この苗を育てる作業が「育苗」です。私たちが店で見る実を作る前に、次に植える株そのものを準備しているわけです。

いちごの最初の工程は、実をつける株を用意することです。
生産者は育てた苗を収穫用の場所へ植え、花の準備を進めます
子苗が育ったら、生産者は収穫まで育てる場所へ植えます。これを「定植」といいます。栃木県の例では、育苗した苗をハウス内の畝へ定植します。畝とは、苗を植えるために土を盛り上げた部分です。
苗を植えるだけでは、すぐに実はできません。先に花になるもと、「花芽」が作られます。栃木県の一部の育苗では、高い標高の涼しい場所や夜間の冷却を利用して、花芽ができるよう促します。ただし、花芽の作り方や定植の時期は品種と栽培方法によって異なります。

ハウスのいちごは、温度と水を見ながら育てます
定植後、生産者は株が育つ環境を整えます。栃木県の施設栽培例では、ハウスの屋根をビニールで覆い、株元には「マルチ」と呼ぶ資材を敷きます。マルチは土の表面を覆うもので、保温などに役立ちます。
水やりも、苗に水を一度与えて終わりではありません。農林水産省が紹介する生産者の例では、土の水分などを測り、水や養分を供給しています。温度や光も株の育ち方に関わるため、生産者はハウス内の状態を確かめます。センサーや自動給水を使う農園もありますが、すべての農園が同じ設備を使うわけではありません。
栽培台を高くして作業する「高設栽培」という方式もあります。地面の畝で育てる方式と合わせ、栽培する場所の形も一つではありません。ここで大切なのは、生産者が株の状態と環境を見て、育つ条件を整えていることです。

いちごは花が咲いて受粉した後、実が育ちます
花が咲いたら、次は受粉です。受粉とは、花粉が雌しべに届くこと。栃木県のハウス栽培例では、生産者がハウス内にミツバチを入れ、花粉を運ぶのを助けてもらいます。
受粉した花の後、私たちがいちごとして食べる部分が大きくなり、色づいていきます。花が咲いてすぐ赤い実になるわけではありません。ミツバチと実の形の関係や、赤い部分の植物学上の名前は、それぞれ別の記事で詳しく扱います。

苗を植えることと、花から実になることは別の段階です。
生産者はいちごを順に収穫し、選別して出荷します
実が育ち色づいたら、生産者は状態を見て収穫します。栃木県の施設栽培例では、出荷が始まると毎日収穫や調整作業を行います。株の実を一度にすべて取って終わり、という作業ではありません。
収穫したいちごは、出荷規格に応じて選別し、パックに詰めます。JAはが野の例では、生産者やパッケージセンターがパック詰めを担い、JAが出荷前の品質を確認します。担当の分け方は産地によって異なります。

売り場の一パックは、苗づくり、実を育てる管理、収穫、選別がつながった結果です。
いちごの作業時期は、露地とハウス、地域や品種で変わります
「いちごは何月に植え、何月に収穫するのか」と一つの日付で答えることはできません。下の表は、栃木県いちご研究所が紹介する施設栽培の工程例です。全国共通の予定表ではありません。
| 時期 | 主な作業 |
|---|---|
| 4〜6月 | 親株を植え、ランナーから子苗を増やす |
| 7〜9月 | 子苗を切り離して育てる |
| 9月 | 収穫用のハウスへ苗を植える |
| 10月 | 被覆やマルチを行い、開花・受粉へ進む |
| 11月〜翌5月 | 実が育ち、色づいたものを収穫・出荷する |
農林水産省の説明では、露地栽培とハウス栽培でも開花・収穫の時期が異なります。冬に店へ並ぶ理由は、関連記事で栽培方式と出荷の関係から説明します。

いちごは、苗を先に作り、収穫用の場所へ植え、花を受粉させ、育った実を順に収穫して作られます。作業時期と管理方法は一様ではありませんが、「苗 → 花 → 実 → 収穫」というつながりを押さえると、店のいちごができるまでを追えます。
関連する疑問
いちごが冬に並ぶ理由、ハウスでの受粉、表面のつぶつぶ、赤くなる仕組みは、関連記事の公開後にリンクします。
参考・出典
- 栃木県農業総合研究センターいちご研究所「いちご栽培の1年」(2024年5月27日更新、2026年9月24日確認)
- JAはが野「いちご」(2026年9月24日確認)
- 農林水産省中国四国農政局「いちご」(2026年9月24日確認)
- 農林水産省 aff「今注目されているいちごの生産者」(2026年9月24日確認)
編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は上記資料をもとに作成し、文字と工程順を照合した概念図であり、特定の農場を示しません。

