玉ねぎはなぜ北海道で多く作られる?春まき・機械化・貯蔵の仕組み

収穫した玉ねぎを入れた箱、育苗ハウスと畑を背景に北海道産が多い理由を問う編集画
AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

売り場の玉ねぎに「北海道産」が多いのは、涼しい気候と広い土地があるからでしょうか。

それだけではありません。北海道の玉ねぎ産地では、早く始める苗づくり、地域に合う品種、整備した畑での機械作業、乾燥・貯蔵・選別を組み合わせ、多くの玉ねぎを育てて送り出しています。ここでは北見周辺のJAきたみらいなどの例を見ていきます。

春まきと呼ばれていても、苗づくりは雪深い時期にハウスで始まります。畑が使えるまで待つのではなく、先に苗を育てているのです。JAきたみらいの種まきの記録。

ハウスの苗、畑で育つ株、収穫した球のコンテナを上から順に示す図
図1:苗づくり、畑の栽培、収穫後の仕事の大まかなつながりです。細かな収穫手順は省いています。 AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。
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北海道は、2025年産の玉ねぎ収穫量の約6割を占める

まず、どれくらい多く作られているかを、同じ年の統計で確かめます。農林水産省の2025年産の概数では、北海道の玉ねぎ収穫量は547,700トン。都道府県の中で最も多く、全国922,000トンの約59.4%を占めます。

2025年産たまねぎの作付面積と収穫量(概数)

地域作付面積(ha)収穫量(トン)
全国24,300922,000
北海道14,300547,700

出典:農林水産省・令和7年産の都道府県別統計「たまねぎ」シート。2026年4月28日公表、2026年10月1日確認。割合は547,700÷922,000×100を編集部で計算し、小数1桁に丸めました。9月29日公表の年間全国表でも全国値は同じです。

この割合が表すのは、国内で収穫した量です。輸入を含む売り場の割合や、味・人気の順位ではありません。

春まきでも、苗づくりは雪深い時期にハウスで始める

北海道は冬の寒さが厳しく、玉ねぎを畑で冬越しさせるのが難しいため、春から夏に育てる春まきが一般的です。ただし、春に畑へ直接種をまくという意味ではありません。

JAきたみらいの説明では、種まきは雪が残る2〜3月にハウスで行います。種から苗を育てる「育苗(いくびょう)」を早く始め、畑で育つ期間を確保します。

育った苗を畑へ移す作業が「移植(いしょく)」です。JAきたみらいの2025年の産地紹介では、2月中旬ごろに種をまき、4月中旬〜5月中旬に畑へ植え付ける例が示されています。JAきたみらいの栽培概要。

外に雪があるハウスの中で苗を育て、雪のない畑へ移植する二場面の図
図2:JAきたみらいの地域例を整理した模式図です。育苗を早く始め、畑へ苗を移します。時期は地域・品種・年で変わります。 AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

つまり、苗を育てる季節と、畑で育てる季節を分けています。開始時期は地域・品種で変わり、春まきは北海道だけの方法でもありません。農研機構は東北・北陸向けの春まき夏どり作型も開発しています。農研機構の研究成果。

玉ねぎの品種は、日長と温度への反応に合わせて選ぶ

苗を早く育てても、どんな品種でも同じように球が大きくなるわけではありません。

玉ねぎが球を作り、太らせる時期には、温度に加えて「日長(にっちょう)」が関わります。日長は、日の長さのことです。球を作る反応は品種によって異なり、北海道では一般に長い日長の条件に向く品種を使います。タキイ種苗の技術解説。

ここでの日長と、晴れて日が差していた「日照時間」は別のものです。長く日が差す地域なら、品種を問わずよく育つ、という話ではありません。

品種を選ぶ仕事も、地域の季節に合わせるために必要です。さらに、多くの苗を植えるには、畑での作業を進める仕組みが要ります。

畑の整備と機械化で、苗を植え収穫する仕事を広げた

北海道の玉ねぎ生産は、もともと土地が広いという条件だけで拡大したわけではありません。

農畜産業振興機構の2011年の産地調査では、水田から畑への転換と畑の整備、大型機械の導入が進み、移植・収穫が機械化されてきた経緯が説明されています。これは産地成立の歴史であり、当時の面積や生産割合を現在の値として使うものではありません。北海道の産地形成の調査。

実際の仕事を見ると、JAきたみらいの移植現場では専用の機械が苗を植え、植わらなかった場所には人が苗を補います。2021年の移植の記録。

人が運転する機械で苗を植える場面と、抜けた場所へ人が苗を補う場面を並べた図
図3:機械と人の仕事の分担例です。JAきたみらいの移植記録をもとに整理しています。機械の正確な構造や機種を示す設計図ではありません。 AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

収穫にも、玉ねぎを拾い上げる機械と、葉を切る機械を使う例があります。選別した玉ねぎはコンテナに入れ、選果場へ送ります。2023年の収穫の記録。

機械は、たくさんの株に繰り返す作業を担います。一方で、人が状態を確かめ、手直しする仕事は残ります。機械化と無人化は同じではありません。

品種と乾燥・貯蔵・選別設備を合わせて、出荷を続ける

多く収穫しても、送り出すまでに品質を保てなければ、出荷につながりません。畑の仕事に加えて、収穫後の設備も産地を支えています。

JAきたみらいの産地紹介では、根を切る作業の後、球を拾い上げ、葉を処理し、コンテナで風を通して乾燥させます。乾燥・貯蔵・選別の施設も整え、収穫した玉ねぎを出荷につなげています。JAきたみらいの収穫と施設の説明。

収穫後の玉ねぎを乾燥し、貯蔵し、選別して出荷する流れを縦に示す図
図4:貯蔵向けの代表的な経路です。設備と取扱いは地域・品種により異なり、全ての球を長期貯蔵するわけではありません。 AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

倉庫を造るだけで、どの玉ねぎも長く保存できるわけではありません。JAふらのの担当者への取材では、収穫時期や貯蔵性が異なる品種を組み合わせ、常温・冷蔵などの施設を使い分ける出荷計画が説明されています。ホクレンのJAふらの取材。

貯蔵設備は、収穫した球を保ち、出荷を待つためのものです。畑での収穫量を増やす設備とは役割が違います。全ての球を長期貯蔵するわけでもありません。

北海道でも、高温と少雨で玉ねぎの育ちが鈍る年がある

北海道が主産地だからといって、毎年同じように収穫できるわけではありません。

農林水産省の2025年産の調査結果では、北海道で6月中旬から高温、6月下旬から少雨となり、生育の停滞と球の肥大の抑制が見られたと説明されています。2025年産の調査結果、14ページ。

産地が成立した理由と、その年の育ちやすさは分けて考える必要があります。気候を生かす技術や設備があっても、天候の影響がなくなるわけではないのです。

まとめ:北海道の玉ねぎは、苗・畑・出荷の仕事で支えられる

苗づくり、品種、畑と機械、出荷設備の四要素が産地を支えるというまとめ図
図5:産地を支える四要素の関係を整理した概念図です。矢印は作業の時間順や寄与率を示すものではなく、品種の絵は選択の概念を表します。 AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。

北海道で玉ねぎが多く作られる理由は、涼しさと土地の広さだけではありません。ハウスで早く苗を育て、地域に合う品種を選び、整備した畑で機械を使い、収穫後の乾燥・貯蔵・選別までつなげています。

売り場の「北海道産」の背後には、育てる仕事と送り出す仕事を積み重ねてきた産地の仕組みがあります。

玉ねぎの栽培と、一年中届く仕組みも確認する

栽培の順序は玉ねぎの種まきから収穫・乾燥まで、各産地から届く時期と貯蔵の関係は玉ねぎが一年中買える仕組みで説明しています。

同じ北海道でも、じゃがいもの産地を支える仕組みには種いもや輪作など別の特徴があります。土地と機械を使う共通点と、作物ごとの違いを分けて読んでください。

参考・出典

本文の各リンクを参照してください。数量は2025年産の政府統計、作業と設備はJAきたみらい・JAふらのの地域例、産地成立は歴史の調査として区別しています。資料の確認日は2026年10月1日です。

編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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