アクアポニックスとは?魚・微生物・野菜がつながる仕組みを図解

魚と葉物野菜を並べ、魚の水で野菜が育つのかと問いかける大人向け2D編集画
AIによるイメージ。実在する設備の写真や設計図ではありません。

魚を育てた水で、本当にレタスまで育つのでしょうか。

水槽の上に野菜が並ぶ写真を見ると、魚のふんを根がそのまま吸っているようにも見えます。けれど、仕組みはもう少し丁寧です。

先に答えると、アクアポニックスは、魚の養殖と土を使わない植物栽培を水でつなぐ仕組みです。魚の排出物に含まれる窒素は、微生物の働きで植物が使いやすい形へ変わります。

つまり、魚と野菜だけの仕組みではありません。微生物、ろ過、水を動かす設備、そして人の管理まで含めて、初めて一つの生産システムになります。

アクアポニックスを支える魚、微生物、植物、人と設備の四つの役割
図1:魚・微生物・植物・人と設備が同じ水を介して支え合う全体像。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。
目次

アクアポニックスでは、魚から出た窒素を微生物が植物の利用しやすい形へ変えます

アクアポニックスで植物へ渡る養分の出発点は、魚に与える餌です。魚が餌を食べると、水中へアンモニアやアンモニウムなどの窒素成分が出ます。食べ残しやふんのような固形物も生まれます。

固形物と水に溶けた窒素が別の経路をたどることを示す図
図2:固形物は回収・分解・清掃の対象になり、水に溶けた窒素は微生物と植物へつながります。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

ここで働くのが微生物です。微生物は、水中のアンモニアやアンモニウムを亜硝酸へ、さらに硝酸へと変えます。この一連の変化を「硝化」といいます。難しく聞こえますが、役割は明快です。魚から出た窒素を、植物が利用しやすい形へ渡す変換係です。

魚から出た窒素が微生物によって亜硝酸、硝酸へ変わり植物に利用される流れ
図3:微生物が窒素の形を変える「硝化」の基本。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

植物は、硝酸など水に溶けた養分の一部を根から吸収します。一方、固形物は別です。放置すると酸素を消費したり、配管や栽培部分を詰まらせたりするため、方式に応じて回収や分解、清掃が必要になります。

ここで大事なのは一つです。魚と野菜をつなぐ見えない主役が、微生物だということです。

では、その変換が起きる水は、設備の中をどう動くのでしょうか。

アクアポニックスの水は、魚槽からろ過・植物の根を通って戻ります

代表的な結合型のシステムでは、魚槽の水をポンプで送り、固形物を取り除く部分や、微生物が働く生物ろ過の部分を通して、植物の根がある栽培側へ運びます。植物に利用された水は、再び魚槽へ戻ります。

ただし、設備の並びは一通りではありません。植物を支える培地そのものが固形物のろ過や微生物のすみかを兼ねる方式もあれば、固形物を除く装置と生物ろ過槽を分ける方式もあります。下の図は、考え方をつかむための代表例で、施工図ではありません。

魚槽、固形物処理、生物ろ過、栽培部を通って水が戻る代表的な流れ
図4:代表的な結合型の水の流れ。部品の順番や方式は設備によって異なり、施工図ではありません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

水を戻して使うからといって、水がまったく減らないわけではありません。蒸発、植物から出る水分、清掃などで失われるため、補水も必要です。

要するに、循環とは、同じ水が何も変わらず回ることではありません。途中で処理され、微生物と植物に利用されながら戻るという意味です。

アクアポニックスの循環は、人が魚・微生物・植物の条件を調整して保ちます

魚、微生物、植物は、同じ水を共有します。しかし、好む水温やpH、必要な酸素の条件は完全には一致しません。そのため、人が三者の折り合う範囲を保ちます。

見るのは、水温やpHだけではありません。水に溶けた酸素、アンモニアや亜硝酸の状態、餌の量、魚の数、固形物のたまり方、水量なども確認します。植物に不足しやすい養分があれば、魚への影響も考えて補う場合があります。

人が水質、酸素、餌、水量を確認して循環を保つことを示す図
図5:循環していても、水質・酸素・餌・水量の確認は必要です。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

身近なたとえなら、一つの部屋で人、植物、ペットが暮らすようなものです。誰か一人に合わせればよいのではなく、全員が無理なく過ごせる温度や空気を探します。

循環していることと、放っておけることは別です。

アクアポニックスの価値は、魚と植物の生産を水と養分でつなぐことです

アクアポニックスでは、養殖側で生じた窒素を植物側で利用し、処理した水を魚側へ戻します。別々だった魚と野菜の生産を、水と養分の流れでつなぐのが基本です。

魚、微生物、植物、人と設備の役割を一つの生産システムとして統合した図
図6:魚・微生物・植物・人と設備の役割をつないだ生産システム。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

ただし、「循環型」という言葉だけで、どの設備も環境にやさしいと決めることはできません。電力、魚の餌、設備、生産量、補う水や養分まで含めて、環境への影響は別に確かめる必要があります。

スーパーや飲食店で「アクアポニックス産」という表示を見たときは、魚のふんで野菜が育つ単純な仕掛けではなく、魚・微生物・植物の役割を、人が水の中でつないでいると考えると、仕組みを正しく捉えられます。

アクアポニックスの要点は、魚・微生物・植物・人の役割分担です

役割していること
魚餌を食べ、水中へ窒素成分や固形物を出す
微生物アンモニア/アンモニウムを亜硝酸、硝酸へ変える
植物水に溶けた硝酸などの養分を根から吸収する
人と設備水を動かし、固形物、水質、酸素、餌、水量を調整する
アクアポニックスの入力、循環、利用、損失、人の管理を一枚にまとめた図
図7:入力、循環、利用、外へ出るもの、管理まで含む記事全体のまとめ。循環という名称だけで環境負荷は決まりません。AIによるイメージをもとにbest earth編集部作成。概念図。

アクアポニックスから次に広がる疑問

参考・出典

編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は上記資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・工程・因果関係を照合した概念図で、特定設備の設計図ではありません。

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この記事を書いた人

best earth編集部のアバター best earth編集部 食べものの疑問を、農業から読み解く編集部

食べものの「なぜ?」を、農業から解き明かす編集部です。公的機関・大学・研究機関などの一次情報を確認し、作り方、育つ仕組み、産地、環境、技術を図解でわかりやすく紹介します。

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