植物工場の写真では、何段もの棚にリーフレタスが並んでいます。光や温度を調整できるなら、トマトや米など、もっと多くの作物を同じように作れそうです。それでもレタスが多いのはなぜでしょうか。
先に答えると、レタスは草丈が低く、食べる部分が葉で、生育期間が比較的短いため、人工光・水耕栽培・多段棚・環境制御を効率よく使いやすいからです。
植物工場で他の作物が作れないわけではありません。技術的に「育つ」ことと、設備費や電気代をかけて「安定して生産しやすい」ことは別です。

人工光型植物工場では、レタス類が主要品目です
植物工場には、太陽光を使う施設と、閉鎖した室内で人工光を使う施設があります。この記事で扱うのは、LEDなどで光を与える人工光型です。
農林水産省の2025年資料では、人工光型植物工場の事業者が扱う品目の約9割をレタス類が占めると整理されています。調査時点と集計単位に限りがあるため、国内生産量の9割という意味ではありません。
ここで大事なのは、レタスが偶然選ばれたのではなく、設備の特徴と作物の形が合っていることです。

レタスは、低い棚と多段栽培を使いやすい作物です
リーフレタスは、トマトやキュウリのように高い支柱へつるを伸ばしません。根の下に養液の通り道を作り、葉の上に照明を置けば、比較的低い栽培棚で育てられます。
棚を上下に重ねると、同じ床面積から複数段の収穫ができます。都市近郊や建物内の限られた面積を使う人工光型では、この「高さ方向の利用」が重要です。
ただし、段数を増やせば自動的に効率が上がるわけではありません。各段へ光、風、養液を均一に届け、作業や清掃ができる間隔も必要です。

レタスは、葉を収穫するため栽培の終点が早く来ます
レタスで収穫するのは葉です。花を咲かせて受粉し、果実を大きくするまで待つ必要がありません。苗を植え、葉を増やし、必要な大きさになれば収穫できます。
一方、トマトは茎を伸ばし、花を咲かせ、受粉し、実を育てます。長い期間、強い光と広い空間を使います。作物が大きく長く育つほど、棚の回転は遅くなり、照明と空調を使う時間も増えます。
レタスの強みは、単に育ちやすいことではなく、商品になる葉を比較的早く収穫できることです。

植物工場は、光・空気・水をレタスに合わせて整えます
人工光型植物工場では、主に三つの環境を整えます。光は強さ・色・明暗時間、空気は温度・湿度・気流・二酸化炭素、水は養液の濃さ・pH・温度・流れです。
センサーで状態を測り、照明、空調、ポンプなどを調整すると、天候に左右されにくい生産計画を立てられます。同じ条件を繰り返しやすいことは、形や大きさをそろえるうえでも有利です。
ただし、制御には設備と電力が必要です。環境を細かく整えられることは強みですが、同時に費用と環境負荷の原因にもなります。

植物工場で作れる作物と、作りやすい作物は違います
人工光の研究では、レタス以外の葉物、ハーブ、苗、根菜、果菜なども対象になります。それでも商業生産では、棚の高さ、光の量、生育期間、収穫作業、販売価格を合わせて考える必要があります。
米のように大量の光と広い面積が必要な作物や、トマトのように草丈が高く長期間育てる作物は、同じ価格帯のレタス用設備へそのまま置き換えられません。
したがって、「植物工場はレタスしか作れない」も、「何でも同じように作れる」も正確ではありません。設備費と電力をかける価値が出やすい作物から選ばれているのが実態です。

レタスと植物工場の相性を一枚で振り返ります
レタスは、低い棚で育てられ、葉を早く収穫でき、光・温度・養液の制御に反応します。そのため、多段化と計画生産の利点を使いやすい作物です。一方、照明と空調の電力は避けられません。

売り場で植物工場産のレタスを見たとき、単に「未来の野菜」と見る必要はありません。作物の形と生産設備を組み合わせた、具体的な選択の結果です。
次に読む疑問
参考・出典
- 農林水産省「フードテックをめぐる現状と課題等」(2025年12月、確認日:2026年9月19日)
- 農林水産省「人工光型植物工場における葉菜類の栽培環境管理」関連議事録(確認日:2026年9月19日)
- 農研機構「人工光下の植物の光合成と有用物質合成」(確認日:2026年9月19日)
編集・図解:best earth編集部。アイキャッチはAIによるイメージです。本文図は記載した資料をもとに、AI画像生成で絵と短い日本語を一体作成し、編集部が文字・順序・因果関係を照合した概念図です。実在する人物・農場・企業・商品を再現した画像ではありません。
